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全国英語教育学会・小学校英語教育学会 第4回英語教育セミナー@熊本学園大学

全国英語教育学会のセミナーに参加してきました。学会関連のイベントに参加するのは3度目ですが、全国規模のイベントは初です。

 

【講演】「小学校外国語活動を踏まえた小中連携の課題と展望」 卵城祐司 筑波大学 (全国英語教育学会会長)

外国語活動を取り巻く昨今の日本の英語教育事情を丁寧に説明されていました。(以下は気になった点)

 

・文字指導の是非

→小学校段階における文字指導のついての卒論を書いたゼミ生がいたので、注意深く聴くことができた。反対派根拠として、子どもたちの学力で差が生まれやすいスキルであるということが言える。

→文字が扱える生徒はどんどん進むことができるが、いつまでたってもアルファベットの読み書きに困難を抱えてしまう生徒はそこから先に進むことができない。

 

・ゆとり教育のポジティブな側面

→ゆとり教育のせいで学力が下がったという言が多く存在するが、実はゆとり教育前/後で学力上昇したなどのデータもある。

→平成15年度小中学校教育過程実施状況調査「①多くの学年で正答率が有意に上昇②特に小学生と中3③アンケートで勉強が好きと答えた子の割合が増加」

 

・逆向き設計

→Wiggins&McTighe(2005)「目標立てる→評価と指導内容決める→指導方法決める」

→卒業式の日に生徒にどんな英語の力を身につけて欲しいかをまず考え、そこから逆算して毎時間指導する

 

・語彙の二側面

→広さ「どのくらいの量知ってるか」

→深さ「どのくらいの理解があるか Ex. LargeとBigの違いなど」

 

・外国語活動全般

→外国語活動の是非ではなく、「どんな外国語活動にしていくか」という議論が必要

→小学校段階においては、スキル向上に過度の期待を抱かない→ワクワク感を与えることが重要

→では、中高大ではどのようにして「ワクワク感」を与えることができるのか?という議論も同様に必要


以上。

話がとても分かりやすかった。ところどころ笑いをとるあたりも絶妙だった。イントロでオーディエンスをグッと引き付けて、本論に入り、オチも俊逸。50分、聞いていて全く飽きませんでした。ほんと凄かった。

 

【セミナー】「現場の声を発信!小学校における外国語活動の実際」大田亜紀 福岡県教育センター

前半はHi friends!を用いた実践の紹介、後半は文科省の答申についてのお話でした。

 

・Hi friends!の活用について

→外国文化に対する気づきを促す(ex. 月表現を説明する際、各国の正月の時期の違いを盛り込む)

→ICT教材の活用。機械トラブルもある。また、リスニングしなくても分かる問いもあったりする→与えられた教材をどのように活用するかをしっかり考える(ex.絵をみて正月→1/1と分かってしまうとき、序数表現に対する気づきを与えるインプットを)

 

・小中連携について

→組織ができると強い。(福島県教育センターも、福岡県教育センターのようにもっと現場に接近しなきゃ理論と実践の乖離は進むばかりだろうと思った。)

・小学校教員の実務的負担について

→5、6年教科化が実現されたら、週3で英語を教えることになる

→モジュールを含めると毎日(どこに教員が自己研鑽できる暇があるのか...いやない)

→大田さんも懐疑的。まだ未決定とのことだったので安心してくださいと冗談交じりに言っていたのが印象的(やっぱり文科省が変なんですよね。一安心。)

 

以上。英語教育に対する情熱が伝わりました。教材研究をしっかりされているのがひしひしと伝わりました。県教育センターとはこうあるべきだよなあ。いや詳しいことは分からないけど。少なくとも、英語教育〇月号の教育センターの方の記事や、地元の県教育センターの講演を見る限り、東北の教育センターは「お役所仕事」で教育に携わっているんじゃないか?東北の教育の現状に憂いをちらっと感じてしまいました(ほんとこういうところ生意気だよなあ自分。でも感じちゃったんだから仕方ない)。

 

 

【シンポジウム】「外国語教育における動機づけ研究の最前線」

林日出男 熊本学園大学

西田理恵子 大阪大学

廣森 友人 明治大学

 

・廣森先生

後2人の発表の橋渡し役的な発表をされていました。動機づけの基礎概念の話やそれに関わる先行研究なども説明されていました。

→発表スライド丁寧に作られすぎていて感動。特に先行研究のまとめ。

→他のパネラーへの配慮、絶えない笑顔、適所適所の笑いどころ、バトンタッチ、どれをとっても自分が今まで参加してきたあらゆる分野のシンポジウムの司会を凌駕していた。芸術的ファシリテーションだ...とすら思った。

 

・西田先生

研究についての発表を2つされていました。

→1つは小学生の動機づけとリスニング力についての縦断研究。もう1つはミュージカル活動を通して小学生の動機づけのどの概念が有意に伸びたかをみた実践研究。

→教育的示唆が俊逸。でも、正直全部タメになりました。発表資料と論文を再度読んでしっかり深めます。発表された研究論文のうち1本は既に読んだことがあったのですが、それが英語論文だからか、理解が浅いようだったなと痛感。まだまだ自分の読解力が足りてない証拠。英語力が不足しているなあと反省。

 

・林先生

主にSDTについてのお話でした。後半は、動機づけ一般について、教育的示唆を含めつつ説得力のある内容の発表をされていました。

→SDT奥が深い。まだまだまだまだまだ勉強不足。

→現場の先生が知りたいような情報がたくさん詰め込まれていた発表だなあと思った。とても実用的な内容で、ほんと練られていたと感じた。

→笑いをとりにいく(そして会場大ウケする)あたりも凄かった。絶妙でした。


以上。ほとんど発表の感想のようになってしまった。(笑)

 

詳しい発表内容に関しては、それぞれの研究論文を読むことで深めようと思います。そのうちPapersに掲載します。

 

質疑応答で一発目に質問できました!しかも2つ。

そして会場の笑いもとれた!笑

懇親会でそこから話が広がったりもしたので本当に質問してよかった。正直質問内容は的外れ感があったけど。(笑)

 

【懇親会】@参加者13名

セミナーの参加者の数の多さの割にはだいぶ少ない!笑 きっと遠くから来た人が多かったからなのかな、と。

院生含め学生参加者は自分一人でした。自重を知らない学生でゴメンナサイ(笑)

会場ではなんと西田先生のお隣をゲット!!緊張しながらも色々お話しできました。

・数字(データ)の裏を考えることの面白さ

→なぜ仮説に反する結果が出たのか?など。仮説に沿うよう統計的解釈を変えるのではなく、まずはなぜその数値が出たのかを考える

・統計は基礎から勉強せよ

→理系の統計の授業を受けるべき。理屈が分かる分からないじゃデータの見方も全く異なる。基礎から勉強すべき

・ポスドク等目指すなら論文の書き方もそれ用に考えなきゃダメ

→戦略的にキャリアを考える必要アリ。

などなど。

 

廣森先生にワインをひっかけたという大罪を犯したことを除けば、これ以上ないほどセミナーを満喫できたし、学部生としてできること(いやそれ以上?)は全てできました。

本当に有意義なセミナー参加でした。8月の全国英語教育学会@熊本学園大学が今から楽しみです!